第173話新芽の季節に失恋(3)(完)

「失恋記念飲み会」は、なじみの居酒屋だった。

ビールも日本酒も飲んだ。

料理も美味しかったから、しこたま食べた。


「ほ~~~やけ酒?」

「どか食いだ」

「いいさ、思いっきりやろうよ」

「仲間が元気がないのは、寂しくてさ」

みんなの遠慮しない物言いが、心地よかった。

うれしさに、ホロッと涙が出た。


少し潤んでいると、隣にずっと座っていた同僚の女の子がハンカチを貸してくれた。

「ありがとう、いつもやさしくしてくれて、うれしい」

ちょっとドギマギしたけれど、ハンカチで涙を拭いた。


「今回の・・・私が企画しました」

「少しでも、元気になってほしくて」


「うん、ありがとう」


「あの・・・ハンカチは、元気になるまで持っていてください」


「え?」


「・・・ずっとでも、いいです、ハンカチも交換しましょう」

途端に、様子を見ていた仲間全員から、大拍手。


・・・・

その後、すぐに新しい恋に落ちた。

そして、今も続いている。



数ヶ月後、「いなくなった女」の消息を聞いた。

どうやら、フラれたらしいということ。

でも、もう関係ない。


今、愛し合っている目の前の女を大切にしたい。

ただ、それだけだ。



                               (完)

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