第172話新芽の季節に失恋(2)

しばらくは、意気消沈の日が続いた。

食欲不振、睡眠不足、仕事はかろうじてこなしている程度。

ただ、そんな状態が周囲にもわかったらしい。

心配して声をかけてくる人も出てきた。


「ねえ、噂で聞いたんだけど、あの女にひどいこと言われたんだって?」

「ああ、あいつだろ?だから付き合うなって言っただろ、巻き上げるだけ巻き上げて、すぐに新しい男になびく」

「新しい男だって、いつまで持つかな」

そんな話が多い。

ただ、自分としては、受けた言葉の傷は、金よりも深い。

そういう慰めの声も、聞いているだけで必死。

自分の前から去った女がどうのこうのよりも、言葉の傷のほうが深い。


「まあ、お別れ記念というか、失恋記念でさ」

「飲みに行こうよ」

「大騒ぎしようよ」

「あの女の文句を言っても言わなくてもいいよ」

事情を知る男女数人から、飲みに誘われた。


「ありがとう」

「飲みたい」

飲み会の誘いは、本当にうれしかった。


そして、それが、新しい出会いの一歩だった。

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