第171話新芽の季節に失恋(1)

目には青葉、新芽の季節になった。

風も清々しい。

しかし、心は寒い。


「あなたとは、もう付き合えません」

「もっと、素敵な方が、私にプロポーズしてくれたの」

「収入も容姿も身分も財産も、あなたとは段違い」

「あなたなんか、平民のそこらの女で十分」

「じゃあね、二度と近寄らないでね」

「ジャマなの、ラインもアドも全部消しておくから」

そう言って、突然、彼女は去っていった。


なかなか、人生は悲哀に満ちている。

これが、「現実」。

やはり、力のあるほうに、人はなびく。

黙って見送り、幸せを祈るだけだ。


まあ、その時点で、彼女に対する思いは、きれいさっぱり消えていた。

そこまでの「縁」だったのだと思う。



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