第174話悪夢(1)

行きつけ・・といっても、そんなに通っているわけではないワインショップ。

行くとしても、年に5、6回といったところか。

それでも、かれこれ10年は通っている。

たいていは、間違いのないワインを紹介してくれるし、店主の薀蓄も聞いていて楽しい。


今日も何気なく、そのワインショップに入った。

店主は、何やら先客の女性と話し込んでいる。


仕方ないので、先客との話が終わるまで、店内のワインを眺めていた。

ワインごとに、産地や特徴を書いたカードがあり、読んでいるだけで案外面白い。

ついつい、夢中になって見続けていた。


「ん?」

背中をツンツンとされた。


「え?」

後ろを振り帰ると・・


「あっ・・」

にんまりと笑う彼女がいる。

彼女と言っても、高校生の時の2年先輩にあたる。

ここの店でも、数年に1回ぐらい顔を合わせることもある。


「お久しぶり、すぐにわかった」


「え?どうしてですか?」


「だって、貴方って、体型も髪型も、変わらないしさ・・」

「まあ、高校生の時からとは、言いすぎかな・・」

「白髪は増えているけれど・・それにしても、髪の毛多いなあ・・・

はげるタイプではないね・・・」

「時々、店主さんと貴方のこと、話題にしたりしてるし・・・」

ポンポンと話しかけてくる口調は、彼女のほうだって全く変わりがない。


「先輩だって・・・あまり変わっていません。おきれいです」

ポンポンとした話し方にいつも、押されてしまうものの、高校生の時から気が合う女性だった。


「ふふん・・そのとってつけたような気のない・・・」

やっとのことで切り返したにも関わらず、軽くはねのけられてしまう。


「ああ、この間ね、同窓会やってさ・・・」

彼女はニヤリと笑う。

そしてじっと見つめてくる。


「それでどうしたんですか・・・」

不安を感じる。


「あなたのあの写真をまだ持っている子がいてね・・・」


「え?」

背筋が寒くなる。


「もうね・・・最高!」

彼女は、笑い転げている。

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