第24話甘い?追憶

高校生の頃から、ずっと美容院で髪を切ってもらっている。


中学生まで通っていた床屋は煙草が充満していて、3分も経たないうちに、吐き気を催していた。

美容院は姉のいきつけの店。

最初は姉と一緒に行った。

何しろ美容院なんて行くのが初めてだったから。

出迎えてくれた人は、当時22、3歳の髪の長い清楚な感じのきれいな人。

姉は「弟です、よろしく」といって、少しだけ世間話をして帰ってしまった。


床屋と違って柔らかい雰囲気に違和感を感じたけれど、今さら帰るわけにはいかない。

いろいろ話しかけられるが、15歳の男の子だと、恥ずかしくてまともに応えられない。

きれいなお姉さんが、時々クスクス笑うけれど、対応できない。


シャンプーは床屋と違って後ろに倒れる体勢になる。

指の使い方も、すごく丁寧で、気持ちがいい。

ただ、問題があった。

時々頭を抱えられるたびに、お姉さんの胸に顔が埋没するのである。

呼吸も苦しいし、どうしていいのかわからなくて、顔を離そうとすると、「だめ」と言って、ますます強い力で埋没させる。


シャンプーが終わって一言

「どうしたの?真っ赤なお顔だよ」

と言って、またしてもクスクス笑う。


真っ赤な顔のまま、店を出る時、

「また、来てね」

「こないと、電話するぞ」

そう言って、ニコッと笑う。


結局、高校生の3年間通ってしまった。

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