第25話背筋

「こら!背筋曲がってるぞ!」

どこからか声が聞こえた。

声と言い方には、聞覚えがある。

背筋を言うのだから後ろだろうと思い、振り返る。


「え?」

祥子が立っている。

しかし、かなり若い。

まるで、大学生の当時と同じ。


「何、キョトンとした顔してるの?」

「ほら!背筋まっすぐにして、元気出して!」

叱るような、それでいて元気が出るような・・

愛くるしい顔は全く変わらない。


「夢?」

十年たっても同じ顔なんて信じられない。


「夢でも何でもいいの!ほら!」

祥子はバッグから手鏡を取り出して、私の顔を見せる。


「わ!」

長髪だし、自分の顔も若い。


「ねえ!遊びに行こうよ!約束でしょ」

祥子は、キョトンとする私の腕をすっと組んだ。


「背筋曲がると、心も曲がるよ!」


「その通りだね。なんか元気が出てきた」


「うん、私もうれし い」

祥子は、満面の笑みになった。



途端に目の前が明るくなった。

やはり夢だった。

いつのまにか、机に向かったまま居眠りしていたらしい。

放心状態の中、少しがっかりする。


「え?」

スマホが光っていることに気がついた。


「わっ・・・祥子?」

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