第338話猫の物語(完)おとぎ草子から

さて、ようやく夢からさめた聖職者は

「こんな、馬鹿げた夢の話を他人に話したならば、やはり馬鹿げているとか、気が違ったとか言われそうだ」と思っていたけれど、まあ、それはそれで珍しい夢の話なので、結局親友に話してしまった。

話をしながら、自分で照れてしまって

「まあ、戯れだねえ」と言うのだけれど、

その親友は、案外真顔になっている。

その親友いわく

「まあ、あなたの言うとおりだねえ」

「最近はネズミも減ったね、物を取ることもなく、枕元を歩くこともないねえ」

「ただ、これは天下の政治がしっかりしているからでは、滅多にないことだけどね」

「帝もお栄えになり、民も同じく栄える」

「まあ、永久にこんな時代が続くといいね、のんびりできるというものじゃないか」

と、のん気な答えである。



                                   (完)


○慶長七年の作と言われている。

 尚、慶長五年に関が原の合戦、慶長八年に徳川家康が征夷大将軍となっている。

○豊臣政権の末期、徳川政権の創始期という緊張感の中で、こんなトボけた作品を誰が何の目的で、書いたのだろうか。

○京都の正月の菓子は、今と変わらないものがあって、興味をひかれた。

○京都内の各寺社の名前もあったけれど、名前が出ない寺社は、「それほどではない」という意味なのだろうか。

○近江の名所紹介もあったけれど、これも、なかなか網羅していて面白い。自分の知る地名がいつ出てくるか、そんな感じで読んでしまった。

○都を負われたネズミ族の悲哀と猫族のゴウマンな態度。その猫族を「お前たちも犬に追われろ」という、ネズミ族の負け惜しみが、なかなか面白い。

○要するに「天下泰平」を望む庶民の気持ちなのか。


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