第375話思はぬ方に泊まりする少将(5)堤中納言物語
さて、このような生活が続いていたのですが、妹君の乳母が亡くなってしまいました。
その乳母の娘は、右大臣の少将の乳母子である左衛門尉の妻です。
妹君の美しさを、夫の左衛門尉が、右大臣の少将にお話をすると、少将は正妻がいるのにもかかわらず、浮かれ歩く男君ですので、手紙などを使い、熱心に求婚なされるようになりました。
妹君としては、そういうことは少しも良いこととは思いませんし、
姉君としても、
「そんな、とんでもない話はありません、思いがけず軽々しいことになってしまった私の身のありさまでさえ辛いというのに、今をときめく按察使大納言様の御娘様を正妻になさっているお方とのご関係など、上手くいくわけがありません」
と、言うのですが、やはり今の自分達の寂しい境遇を恥じているのか、心にしみてあわれに感じます。
姉君は、まだ二十歳を一つ越えたくらい、妹君はそれより三歳ほど年下。
二人とも、後ろ盾がないので、とても頼りない状態なのです。
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