第374話思はぬ方に泊まりする少将(4)堤中納言物語

さて、その夜の少将は、宮中から退出なされると、姉君の屋敷にいらっしゃいました。

そして、門をお叩きになるので、侍女たちが目覚め、一緒に寝ていた妹君をお起こしして、妹君のお部屋へとお連れします。

少将は、すぐに姉君のところに来られました。


少将は、最初のうちは

「父の大将の君が、無理にとお誘いになりました長谷詣でのこと」などのお話をなさります。

そして、姫君が先程書きつけた御手習いを見つけられて


「常に緑色をした軒の忍草というものをお知りにならないのに、枯れていく秋を悲しむのですか」

(私の心は、軒の下の忍草と同じ、あなたを思い偲ぶ心は色褪せることはありません。それなのに私の心が飽きてしまって、あなたから離れると思われるのですか)


などと、姉君の御手習いに書き添えたりするのです。


姉君は、本当に恥ずかしくて、そのお顔を袖に引き入れてしまうのですが、とても可憐で乙女のように初々しいのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る