第376話思はぬ方に泊まりする少将(6)堤中納言物語

ところが、姉君が太秦に参籠をされて留守の間に、乳母の娘がの少将を手引してしまったのです。

少将は、何の抵抗もなく、妹君の御寝所にお入りになってしまいました。


姉君も、後からそのことをお聞きになり

「私のことはさておき、なんとかして妹君だけでも、世間並に恥ずかしくない婿君を取ろうと思っていましたのに」

「このように二人ともに落ちぶれていく様子を、世間の人々が、どれほど呆れて聞くかと思うと、本当に辛くなります」

「亡くなった両親も、おそらく哀しくご覧になっているのでしょう」

と、恥ずかしく前世からの因縁と思い肩を落とすのですが、今さら仕方がないことなのです。

姉君は、そう思って妹君をお世話するのです。


の少将も、妹君を可愛らしく思うのですが、正妻の父上である按察使大納言の耳に入ると問題になると、父の右大臣があわてて諌めるので、姉君の夫の少将よりも増して、寄りつきません。


さて、右大臣の少将の姉妹が、の妻。

つまり右大将の少将の母でした。

そういうことなので、二人の少将は、叔父と甥の関係で、親しかったのです。

当然、お互いの隠し妻のことも、了解済みなのです。


右大臣の少将は、正妻を持ち、すでに三年経ちますが、ほとんど正妻には寄り付きません。

あちらこちらの女の所へと、浮かれ歩きを続けています。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る