第377話思はぬ方に泊まりする少将(7)堤中納言物語

さて、どちらの少将の父君としても、ご子息のあまりの浮かれ歩きには心配をするので、引き止めをするようになりました。

そうなると、時には右大将のお屋敷に姫君たちを御迎えすることもあります。

姫君たちとしては、自分たちから出かけることは、軽々しいことであって、はばかるべきと思うこともあるのですが、

多くの侍女たちが

「今さら、お呼びに従わないのも、よろしくありません」

「行ってはいけないところに、行くわけでもないのですから」

と、言ってくるので、心ならずも右大将のお屋敷にいらっしゃる時もあるのです。


そんな状態が続いた、ある夜更けのことです。

右大将の少将は、右大将のお屋敷から、姫君の御迎えとしてお車をお出しになりました。

ところが、あいにく、姉君と妹君の、それぞれの「お相手」に詳しい者がいない日でしたので、姉君の侍女の侍従の君に

「少将殿のお迎えです」と言ってしまい、寝ぼけていた侍従の君は、「どちらの少将なのか」を確認せずに、気の進まない姉君を車に乗せてしまったのです。

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