第378話思はぬ方に泊まりする少将(8)堤中納言物語

姉君は、右大将のお屋敷に到着しました。

御車を寄せて姉君をお降ろしをされるの少将を、姉君は「別の人(妹君の夫)」であるなどとは、全く疑ってはおりません。

雰囲気も、親しみやすく人あたりも柔らかいので、本当の夫のの少将と、ほぼ同じなのですから。

そういうことで、最初は顔もしっかり見ないので、全くわかりませんでした。


が、しかし・・・

少しずつ「別の人(妹君の夫)」の右大臣の少将と見極めた時は、現実とは思えないほど、戸惑いや心の乱れに包まれてしまいます。

かつて、本来の夫の右大将の少将に、突然忍び込まれて夢のように感じた初めての夜以上に、本当に恐ろしく理解しがたいので、そのまま夜具をかぶってしまいます。


間違えた手引をしてしまった侍女の侍従の君も

「これは、いったいどうしたことなのでしょう」

「これは、あってはならないことなのですから、御車を寄せて、このまま帰りたいのですが」

と、泣きながら右大臣の少将に訴えるのです。


しかし、好色の極みでもある右大臣の少将が、そんなことを、お許しにはなりません。

侍従の君も近づいて引き離すこともできず、泣く泣く几帳の後ろに座るしかないのです。

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