第177話悪夢(4)

由美は右隣、祥子は左隣である。


「あの・・・」


「え?」由美


「タクシーに3人で乗る場合、誰か助手席に乗るのでは・・・」

「いいじゃない・・美女二人に囲まれて・・・」祥子


「それとも、二人に囲まれて狭いとか?」由美


「いえ・・・そんなことは・・・」

とても言えやしない。


「なら、問題ないでしょ」祥子


「逃走防止だし」由美


「うん、それいいねえ・・・」祥子

まったく聞く耳を持たない二人である。


タクシーは、繁華街を抜けて、瀟洒な住宅街に入っていく。


「世田谷だったんですか・・・」


「うん、大きなお店じゃあないけれど」由美


「由美さんが、料理を?」


「まさか・・旦那は3年前に亡くなっちゃって、今は娘が作ってる。もちろん、私も少しは手伝うよ・・・」由美の顔がちょっと曇った。


「へえ・・・そんなに大きくなったんだ。」

由美の娘は、小さい頃に見ただけである。

あのワインショップだった。


「娘にもメールしとく・・・写真の君が行くって」

由美はうれしそうに、携帯をいじっている。


「写真の君って・・・あの写真の他にもあったんですか?」


「え?忘れちゃったの?」祥子


「うん、ますます楽しみだなあ・・・」由美


タクシーは、ほどなくして、小さなイタリアンレストランに停車した。

既に、BMが1台駐車していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る