第18話セピア色の写真

「おばさんのお葬式、人が少なかったね」

母に聞いても母は黙っているだけ。

「結婚もしなかったし・・・だから、子供もいないし・・・」

言葉を少し加えても、母はまだ黙っている。

「おばさんって・・・いつも仕事ばかり」

「それしかなかったのかな」

「あまり、楽しそうな顔もしなかったな」

そこまで言葉を加えて、やっと母がこっちを向いた。


「・・・楽しみはこれだけ・・・」

「姉さんの楽しみは、この写真を見ることだけ・・・」

「姉さん・・・ごめんなさい・・・」

「本当に・・・ごめんなさい・・・」

母の言葉はそこまでだった。

泣いてしまって言葉にならない。


母の手には変色が進んだセピア色の写真。

子供が二人映り、かなり手垢もついている。


「・・・子供のころのおばさん?」

「そしてもう一人の男の子は?」

母は泣いてしまって、何も答えられない。


「でも・・・あっ・・・」

母の涙の意味をそこで、やっとわかった。


「・・・この男の子は・・・」

何も言えなかった。

男の子は・・・数年前に亡くなった父だった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る