第34話人肌

「お酒ってのは、縁側で日向ぼっこさせてね、ちょうど頃合いのいい時にね」

小春ばあさんは、いろんなことを教えてくれる。

「そうねえ・・・人肌ぐらいのかなあ」

「一番、飲みやすいんですよ」


確かに体温と同じであれば、抵抗も何もない。

お光はもう少し聞きたくなった。

「でもねえ、小春さん、旦那の帰りが遅いとか、そういう場合はどうするんですの?」


小春ばあさんは、クスッと笑う。

「お光さん、そんな野暮なことをいわせないで」


「え?」

お光は意味がわからない


「そういう時は・・・お光さんがお酒ですよ」

「だから  人肌」


お光の耳が赤く染まった。


神田神保町の夕空と同じ色。




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