第354話美術部多佳子の妄想(3)

さて、多佳子は廊下の先に、ようやく「獲物」の健太を見つけた。

そして見つけたからには、思いっきり声をかける。


「健太くーん!」

「ちょっとお話があるの!」


廊下で、突然名前を呼ばれた健太は、

「え?」

と振り返る。


多佳子は、そこでニンマリ。

そして、そこから猛ダッシュ。

健太の前に立って


「あのさ!」

「今日の放課後空いている?」

「ちょっとお願いしたいことがあるの」

もうここで、かなり「手もみ、スリスリ気味」


健太は

「え?何ですか?」

可愛い顔で、首をかしげる。


多佳子は、それでもお願いの内容を廊下、「しかも他人が歩いている」状態で、他人に聞かれるように言うのは恥ずかしい。

だから、そっと耳打ち。

「・・・あのさ・・・絵を書きたいからモデルになって」


すると健太

「えーーーー?」

「どうして?」

ちょっと抵抗する。


しかし、多佳子は引かない。

捕まえたら最後、「どんな手を使ってでも」と思う。

「ねえ、頼むから」

と、ゴリ押し。


健太

「どうしても今日?」

「ちょっと用事があるんです」

とまたしても、抵抗する。


多佳子は少し考える。

「どうしても今日?ということは、今日でなければチャンスがあるのか」

「用事というと先約があるのか」

と思ったので、

「ああ・・・予定があるなら、明日でもいい」

と、引いてしまった。


すると健太

「はい、じゃあ、考えておきます!」

そこで、さっと走り去ってしまう。


残された多佳子

「何さ、逃げるように!」

と思ったけれど、「まあ拒絶されたわけではない、明日が楽しみだ」で、含み笑いで走り去る健太を見つめていた。






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