第353話美術部多佳子の妄想(2)

多佳子は、健太を探して廊下を歩いている。

そして歩きながら様々考える。


「健太君なら刺激を得るには、もってこいのモデルだ」

「どんな衣装がいいのかな」

「光源氏風、貴族の姿」

「ヨーロッパ中世の華やかな騎士」

「サラリーマンは似合わない」

「中国服の少年」

「西部劇のガンマン・・・論外」

「うーん・・・ジーンズって感じはない」

「せっかく肌がきれいだから」

その「肌」で、多佳子のインスピレーションが、またひらめいた。


「そうか、肌の美しさか」

「少女ではない、少年の肌の美しさか」

「健太君って・・・」


多佳子は、健太と夏のプールで会ったことを思い出した。

「あの子、そういえば、毛深くない」

「うーん・・・でも」

「もう少し確認したいなあ」

「でも確認って、どうするの?」

確かに、既に秋、水着のシーズンではない。


「モデルになってってお願いして」

「はいって言ってきたら」

「・・・脱がせる?」

多佳子は、本当にそこでドキドキしてしまった。

それでも、考えた。


「うん、これは芸術のためだ」

「上手に書けば、喜んでくれるはず」

そう思うと、自信までわいてきた。


口説き文句も考えた。

「私の芸術のために脱いでくれ」

考えながら、ますます心が刺激され、興奮してきた。


ただ、ここにも問題があった。

興奮しているのは、多佳子だけ。

当の「獲物」の健太は、多佳子の妄想なんて「何も知らない」という問題である。

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