第277話晶子と出張(8)

午後も、現地支社役席と晶子と現地視察、それでも四時には終了、現地支社に戻り、軽い打ち合わせの後、タクシーで宿泊先に向かう。

俺は晶子に声をかけた。

「ああ、晶子さん、お疲れ様でした」

晶子もホッとした顔になっている。

「いえ、晃さん、こちらこそです。さすがですね、鋭い指摘で、いろいろ気付かされました」

そこまでは良かった。

「それでね、夕食ですが」

ちょっと赤らんだ顔になった。

俺は

「ああ、あまり高いところとか、お昼のお店のような特別のサービスは、しなくていいよ、少し飲めて食べられればいい、あくまでも仕事の出張だ、明日も仕事がある」

と、厳し目の答え。

明日は数値的な分析になるから本社から来た立場としては、的確な分析をしなければならない、決してフヤケた顔などはご法度なのである。


俺のそんな対応を聞いた晶子は、少し困った顔。

「あの・・・晃さん・・・」

「ホテルって・・・あの・・・」

少し戸惑っている。


「どうかしたの?」

話好きな晶子が口ごもるのが、信じられない。


「正直に言っちゃいます!」

晶子の声が、震えた。


「え?正直って何?」

聞き返すと


晶子は

「私の実家、旅館なんです・・・古くからの・・・」

「両親が経営者で・・・」

晶子の顔が真っ赤である。





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