第276話晶子と出張(7)

出てきた料理は、どれも目を見張るもの。

先付けで

穴子寿司 甘芋蜜煮 酢取り蓮根 鱧の子 枝豆 うにゼリー寄せ

添えで 湯葉豆腐の山葵の冷やし餡

椀物で

揚げ鱧真薫 冬瓜 ずいき

向で

かんぱち 岩魚の洗い 剣先いか

焼き物で

賀茂茄子田楽

揚げ物で鮎の香り揚げ

・・・・・・・

とにかく目を見張るし、無粋な俺にとっては「豪勢極まりない料理」が続いた。

「いかに叔母さんの店」といっても、これでは軽く一万円を超える。

いつもなら、社員食堂で、ざっかけない庶民定食を食している俺には、まったく不釣り合いだと思う。


それでも、時々、晶子や現地支社の役席とは話もする。

といっても、概ね現地情勢や今後の見通しの、「一般論」

とにかく、多少でも仕事の話をしないと、心が落ち着かない。


それでも、食事であるので、それ以外の話に移った。

現地支社の役席

「晃さん、食べ方がきれいですね」


「え?何?どこを見ているの?」

俺としては、口うるさい両親に仕込まれた通りに食べているに過ぎない。

そう思うのだけど、晶子まで、「食べ方」で声をかけてきた。


晶子

「晃さんのお箸の使い方とか、すごく美しいんです」


「そう言われても・・・」

俺としては、それしか答えられない。


食事が終わり、晶子の叔母の女将に深くお辞儀をされて、料亭を出た。

領収書は晶子の言うとおり「キッチリランチ料金」になっている。


「こんなことが夜も?」

俺は、少し不安になっている。



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