第144話雨の兼六園(4)

圭子は、本当にホテルまで送ってくれた。

寒いので、ロビーまで入った。


「済みません、こんなところまで」

頭を下げると


「いえ、寒い夜、道に迷われても困ります」

「私も本当に楽しくて」

圭子は、少し笑い、すぐに寂しげな顔になる。


「あの・・・何か・・・」

少し不安を感じる。


「いえ・・・明日帰るんですよね」

「午後でしたよね」

圭子が見つめてくる。


「はい、ホテルの予約は今日までなので」


「明後日のご予定は?」

意外な質問である。


「はい、自由業なので、特には」


「それなら、もう一泊できますか?お宿は私がなんとか」

圭子が、少し明るい顔になった。


「え・・・あ・・・はい・・・」

この応えを、圭子は「承諾」と捉えたらしい。


「明日の午前9時に、お迎えにまいります」

圭子は、手をしっかりと握ってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る