第371話思はぬ方へとまりする少将(1)堤中納言物語

昔話においては、こういう類の話を耳にすることがあるけれど、本当に珍しく心に響く、おそらくは前世からの深い御縁であろうと思われた事件がありました。

その事件について、静かに思い続けて来たのですが、本当に長い年月がたったものであると、深く思うのでございます。


さて、そのお話を申し上げようと思います。


さる大納言には、二人の姫君がおられました。

二人とも、物語に書かれるような姫君に劣らず、何事につけても素晴らしく成長なされたのですが、ご不幸なことに父の大納言も母上も相次いでお亡くなりになってしまいました。

それから後は、古びたお屋敷の蓄えも心細くなり、お仕えする人も次第に姿を消し、本当に心細く、物思いに沈みがちな暮らしを続けておりました。

こういう時に頼りとなるような、乳母もいなかったのです。


ただ、いつもお側には、侍従と弁という若い侍女がお仕えをしておりましたけれど、それでも、年月が経てば、世間からは次第に忘れされた状態です。


そのような中、右大将のお子様も少将が、つてをたどったのでしょうか。

それはご熱心に求婚をなさるようになったのです。

しかし、二人の姫君は、そういった男女のことなど、思いもよらないので、お返事などは全くできないのです。

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