第372話思はぬ方に泊まりする少将(2)堤中納言物語

さて、そんな二人の姫君のご様子ではありましたが、お屋敷の中に、少納言の君という若く恋愛の好きな若い侍女がおりました。

そして、その少納言の君が、思いもよらない話ではありますが、突然、二人の姫君の寝所に、少将を手引きして、入れてしまったのです。

少将は、もともとは、姉君のほうに密かに恋心を抱いていたので、そのまま抱いて御帳台の中に入ると、姫君は驚きますが結局なすすべもなく、男女の関係となってしまったのです。


さてそれから、少将は、姉君の想った以上の美しさに心を奪われ、忍んで通っていたのですが、それが少将の父の右大将の耳に入ることになりました。

父の右大将は

「お身分、お家柄を考えると、妻として不足というほど悪くはない」

「しかし、何故、そんな心細い暮らしの女の所へ通うのか」

と、あまり感心しない様子です。

そんなこともありまして、少将としては、なかなか通うことも困難です。


姉君としても、最初の頃は、少将を避けておりましたが、情けない縁だとも思い、それでも少将に少しずつ身を寄せてしまう様子が、ますます可憐で、しみじみとあわれにも思えてくるのです。

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