第332話猫の物語(5)おとぎ草子から

それに対して聖職者は、コンコンと説教をする。

「その沈み込んだ様子は、痛ましいなあ」

「お前には聖なる教えを聞かせた経緯もある、弟子とも考えている」

「しかしな、お前たちが、何故人間に憎まれているのか、話さなければならない」

「例えば、この私のような一人暮らしの男が、傘を張って立てておくと、お前たちはすぐに柄のもとを食い破ってしまう」

「それから、私の説法を聞きに来る人に、せめてもと思い、煎り豆や黒豆を準備しておくと、夜中にお前たちが全部食べてしまうではないか」

「私の法事用の服も普通の衣も食いちぎる」

「扇、書物、屏風、かき餅、六条豆腐も全部食いちぎる」

「お前たちが、そういうことをしでかすから、そうなると忍耐を訓練している聖職者でも腹が立つ」

「だから、そういう修行をこなしていない普通の人間が、お前たちを殺したくなるのも、当たり前ということになる」


と、人間からすれば、当たり前のことを語る。

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