短編集

舞夢

第1話地中海の風

風が強く吹いて 寒い夜


風を避けるように 狭い路地に入り、


男は小さなバーの扉を開ける。


身体も心も長旅に疲れ、そして冷え切っている。


カウンターの前に立つと


「おかえり・・・」


「今日必ず来ると待ってたの・・」


ラム酒と熱いレモネードのカクテルが 大きなカップに入れられ

男の前に置かれた。


女はじっと男を見ている。


男は目を閉じて 少しずつ飲んでいる。


男の頬に少し赤みが戻ったようだ。


「ありがとう・・ 美味しい・・・助かった」


言葉は 2人には もういらなかった。 


2人の心の中に 懐かしい地中海の青い海と空・・・そして風が吹いていた。

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