第68話港町の少年奴隷(2)

少年奴隷アドニスは、「夜のベッド」は命ぜられないものの、一日中、主人であるヘレンに付き添うことになった。

部屋の掃除や整理は当然のこと、食事や排泄の世話、入浴時の洗体、入浴後のマッサージ、着替えの手伝いを行う。

また、主人ヘレンが街に出かけるときは、必ず鎖をつけられ、同行した。

ただ、煩雑でありながらも、そういう「仕事」は、アドニスは辛くはなかった。


アドニスが辛かったことは、毎朝、主人ヘレナが、アドニスの衣服を全て脱がし、隅から隅まで、点検することだった。

アドニスも、最初は、ヘレナの行為の意味がさっぱりわからなかった。

それを教えてくれたのは、二つ上の少女奴隷で食事係のニケだった。

「ヘレン様はね、アドニスの『身体の成長』と、・・・匂いをかいでいるの」


「匂い・・・」

アドニスは、それもわからなかった。

考え込むアドニスに、ニケは顔を赤くした。

それでも、教えてくれた。


「だから・・・女の匂いだよ・・・」

「このお屋敷は、女だらけ、可愛いアドニスを狙う女も多い」

そこで、ニケの顔が下に向いた。


「ただ・・・ヘレン様にばれると・・・」

「女もアドニスも、命がけだよ」


ニケの言葉を聞いて、アドニスは震えあがった。

そして、「女」そのものを、怖れるようになってしまったのである。


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