第246話団扇(2)落語風?

さて駒吉が八丁堀の職場についてみると、親方がジロリと見てくるんです。

そして、ここでも長話。


「ああ、駒吉かい!毎度毎度いいねえ!」

「お光ちゃんの握り飯抱えてさ」

「ああ、あやかりてえもんだねえ・・・」

「てなこと・・・言っている場合じゃねえな、さっさと木を切っちまってくれ」

「ああ、こないだみたいに、間違うんじゃねえぞ」

「それから、その木を切っちまったら、お前さんに話があるんだ」

「ああ、決して変な話じゃないよ」

「これは、きっとお前さんのタメになる話だ」

「いやね、そんなにがっつくんじゃないよ、それは今ここでは言えないのさ」

「下手に言って、また寸法間違われると、使い物にならねえからな」

「いいかい、だから、そういうことだから」

「へ?意味がわからねえって?」

「まあ、江戸っ子だろう?」

「そういう細かいことなんぞ聞くんじゃねえって!」

「そういう腹に一物のような顔はしねえこった」

「さあ、さっさと切っておくれ」

「いいかい、その切っちまったら、お前さんのタメになる話がね」

・・・・

まあ、いつもの通り、親方の話は堂々巡り・・・

これじゃあ、駒吉だって、なかなか木を切るどころじゃあないんです。


さて、ようやく話の途切れで駒吉は何とか木の前に来たんですがね・・・

ここで、駒吉はぼやくんですよ・・・まあ、これがこれが・・・


「はぁ・・・木を切って?間違いなく?」

「あれだって、そもそも、親方が寸法を間違えたんじゃねえか」

「いやいや、寸法どころじゃねぇって!」

「寸法どころか、使う屋敷が違うんじゃねえか」

「後になって駒さん、図面と違うよってなんでぇ!」

「使う屋敷を間違えりゃ、図面だって寸法だって違うさ、それでオイラをいびるんだから」

「それを言ったらさ、ああ、そんなこともあるさってね」

「困るねえ、ほんと、毎度毎度はこっちのほうだよ」

「ああ!日雇いはつらいねえ!」

「文句を言ったら、また。どーんと仕事だよ!」

「そのうえ、代わりはいっくらでもなんてさ!・・ああ、あの禿狸めえ!」


駒吉の文句も止まりませんな・・・


「そのうえ、てめえの不始末棚にあげてさ、お光にまで、この俺が間違ったみてえに言うもんだから」

「お光に呆れられてさあ・・・」

「なあ、徳利が一つ減り、メザシも一匹減らされ、味噌汁の豆腐も薄いのが二個、お光のは分厚いのが、半丁も・・・」

まあ、駒吉も文句を言い出すと・・・ですが、それでも根は真面目な職人。

木を切り出すのですが


「うーーー今日の寸法も図面も違うとかさ・・・」

「何か、今日の親方、いつもにも増して、おかしいなあ・・・」


「おいおい、下手すりゃ、徳利の中が水になるって」

「メザシは半分?豆腐は・・・薄いの一個」


てなことで、駒吉は、またしても途方にくれてしまうのでございます。

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