第247話団扇(3)落語風?

さてさて、まあ、駒吉は首を傾げながら、木を切っていたんですがね、それでも木を切ること以上に、どうも、その「タメになる話」が気になってしまうんですよ。

それも、親方が「今は教えませんよ」なんて言うもんですからねえ・・・

駒吉だって、そりゃ首を傾げますよ。


「江戸っ子で腹に一物?そんなみっともねえこと・・・親方がしてるんじゃねえか」

「あっきれるねえ・・・ああ、いやだいやだ・・・ああ面倒だねえ・・・」

そんなことをブツブツ言っていると、


「は?駒吉?」

「何がみっともねえ?」

「何が面倒?」

親方が、ニンマリと歩いてくるのでございます。


「あら、まだ切ってないですって・・・まだ早いって」

「それにしても、親方の耳は地獄耳かい・・・お光とおんなじだあ・・・」

駒吉は、そんな風に親方を見るのでございますが


親方

「ああ、ご苦労さん、ちょいとばかしね、タメになる話が先に歩いて来ちまってさ」

「ああ、木を切るのはおよしよ、まあ、どうだっていいんだから」

まあ、ニンマリとわけのわからないことを言うのですが


駒吉が

「へ?話ってのは足があるんですか?歩いてくるって・・・」

「人の形をしたお化けってぇものにも足なんぞないっていうのに?」

「それに、木を切るのがどうだっていいなんてねえ・・・アタシは大工ですよ?」

「大工が木を切らねえんでどうするってんですかい?」

「それに、あなた、親方でしょ?」

「親方が大工に木を切るなって、この暑さで脳みそが豆腐にでもなっちまったんですかい?」

なんてブツブツと文句をつぶやくけれど・・・


親方はもうね・・・手もみをして、後ろの方を見てるんですよ・・・ねえ・・・もう・・・ってわからないねえ・・・ちゃんと言わないと・・・駒吉なんぞ、さっぱりわからねえんです。


それだから

「へ?何のことやら?」

ますます、わからない駒吉なんですがね、親方がまた駒吉の方を見て、まあ・・・恥ずかしいくらいニンマリと


「ねえ、駒吉さん、新富町のな、後家さんがね」

「駒吉さんにどうしてもって、仕事があるらしいんだよ」

「だから、木なんぞ適当でいいからさ・・・」


「し・・・しんとみちょう?」

そんなことを突然、言われた駒吉はびっくり仰天。


なにせね・・・

親方の後ろに歩いてきた女人・・・

これがまたねえ・・・匂い立つような・・・ああ・・・言えねえ・・・

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