第245話団扇(1)落語風?

えーっと、世間には、様々な夫婦というものがございまして、まあ・・・その中でも、様々ってことでもないんですが・・・ああ・・・普通ですねえ・・・

元気の良い女房と、元気を吸い取られちまった亭主と・・・

ああ、まるで、それは我が家ですな(笑)


てなことで、それはともかく・・・コホン・・・

・・・毎度のどうでもいい話を一席。


さて、今日もお光は機嫌が悪いんですよ。

もう、朝から亭主の駒吉に文句の言いたい放題。


「ああ!稼ぎが悪いねえ!これじゃ豆腐一丁も買えないよ!」

「ほら、さっさと仕事にお行きよ!」

「この暑いのに、一緒にいたら、なおさら暑っ苦しい!」

「いいかい?ちゃんと旦那の役に立つんだよ」

「この間みたいに、ノコギリの寸法間違えるんじゃないよ!」

「せっかくアタシが見込んだ男なんだ、立派な大工になってもらわないとねえ!」

「ほら、駒さんの好きな、握り飯を三つも作った、中にはちゃーんと佃の佃煮」

「昆布、アミ、シラスだよ、ねえ、お前さん、大好きだろ?」

「わかった?こんないい女房いないんだから、他の女なんぞに色目使うんじゃないよ!」

「間違えても新富町の後家さんには・・・あの後家さんは男好きでシツコイっていうから」

・・・・・・


駒吉は、おにぎりを受け取った時点で、すでに長屋にはいないんですがね・・・

お光の口は動き出したら止まらないんですねえ・・・これが・・・


でもね、それにしても、新富町の後家っていっても、駒吉にはよくわからないんです。


「まあ、ちらっとお光が変なことをいっていたけれど、今日は八丁堀だしなあ」

「今日はって、そもそも当分八丁堀だよ、新富町まで足なんか伸ばせるかいっ!」

「大方、長屋の婆さんたちと井戸端で仕入れたネタだろ?呆れるねえ・・・」

「しっかし、女の耳ってぇものは、すごいねえ・・・」

「まるで犬の鼻とおんなじだねえ、何でもかんでもクンクンと鼻・・・いや耳に入るってぇもんだ、まあ呆れちまうねえ・・・」

「それにしても、男好きはともかく、シツコイって、どんなんだろうねえ」

「まあ、関係ってものもないねえ、どうでもいいや」


てなことで、駒吉は八丁堀の仕事場に、でかけたのでございます。


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