第240話瓦礫と涙

大地震の後、数多の崩れ落ち、ほぼ瓦礫の山と化した住宅を掘り返した人の話。


「本当にひどかった」

「もし、この中に人がいても、生きてはいないと思った」

「それでも、瓦礫を除去している時にね」

その人の目に涙が浮かぶ。


「まず見えてきたのは、女の人の背中」

「もちろん死んでいるけれど」

「血痕が黒くてね、背中いっぱいに」

目から涙がこぼれてきた。


「なんとか引きずり出したら・・・」


「小さな女の子を抱いているのさ、背中でかばってね」

「女の子も、懸命に女の人の胸に顔をつけてさ」


「もうこれ以上は・・・」

その人は、顔をおおって泣き出してしまった。

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