第253話階下の圭子さん(3)

「いいから、先に」

圭子さんは、案外強引である。

俺の腕をつかみ、圭子さんの部屋に。

そんな、女性の部屋に入るなんて、はじめてだし、よくわからないけれど、ドキドキする。


「あの・・・大丈夫ですから」

そんなことをいうけれど、

「薬箱出してくる」

圭子さんは、俺の言葉など何も聞かない。


圭子さんの部屋は、俺の部屋の殺風景さとは違い、薄いピンクの花柄カーテン。

ベッドカバーも薄ピンク。

後は、いろいろあるけれど、キチンと整理整頓されている。

「薬箱」を待っている間、それくらいは観察した。

でも、観察をしたからといって、それがどうってことはないのだけど。


「じゃあ、バンザイ出来る?」

圭子さんが、俺の後ろにきた。

「え?バンザイ?」

バンザイだから両腕をあげるのだけど、理由がよくわからない。

それでも、まあ、あげるだけと思い、両腕を上にあげる。

背中を打っているので、少し痛い。


「シャツ脱がすよ」

次に圭子さんは、びっくりするようなことを言ってきた。

「え?どうして?恥ずかしいです」

思わず、そんなことをいうけれど

「ダメ、クスリ塗るの、切れているんだから!」

圭子さんは、けっこう強い口調。


「あ・・・はい」

という時間もなかった。

「ゴチャゴチャ言わないの、男の子でしょ!」

圭子さんは、結局俺のシャツを脱がし、水で濡らしたタオルで俺の背中を拭いている。

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