第82話コンサートの後で(3)

ステージには美由紀と一緒に上がった。

美由紀は、ピアノの前に座ると、すぐにバッハの平均律クラヴィア曲集の第一番を弾きだす。

この曲は、グノーがメロディをつけ「アヴェ・マリア」としても名高い。


「そっか、わかりやすいか・・・」

最初は、グノーのアヴェ・マリアのメロディを美由紀のピアノに、そのまま合わせた。

何よりシューベルトの膨大なまでに長いシンフォニーよりは、わかりやすい。

美由紀のピアノがジャズ風にスゥイングし始めたのを感じ、自分のヴァイオリンも甘めのジャズ風に変えた。

とにかく美由紀も上手に合わせてくれるので弾きやすい。

さすが、東京芸大卒である。


それでも、ちょっと祥子が気になった。

「でも、耳を塞いでいないし、ちゃんと聞いているし・・・」

「でも・・・あれ?」


祥子が立ち上がった。

その手には、フルートを持っている。


「おいおい・・・」

祥子がピアノを弾いている美由紀に何か話している。

美由紀も途中から笑い出した。


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