「あら、いらっしゃいませ！」

さすが百戦錬磨の美由紀、ニッコリと祥子にご挨拶。

そのニッコリには抗しがたいのか、祥子も「一応は」ニッコリ。

でも、祥子の顔はすぐに変化する。

「史さん・・・探してましたよ、指揮者もコンマスも、他の人も」

祥子からイキナリの文句である。

「・・・そんなこと言ったってさ・・・」

「ああいう打ち上げって嫌いだしさ」

ブツブツ抗弁するが、そんなことで納得する祥子じゃない。

「私だって・・・」

祥子が一歩前に出ると

「さあさあ、ステージだよ」

美由紀は俺の腕をグイッと引く。

「じゃあ、ちょっと違うことするから、祥子は耳をふさぐか、帰っても」

その「帰っても」のところで、祥子が強く反応した。

「帰りません！聞きます！」

ますます、詰問調の目になっている。

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