第83話コンサートの後で(4)

結局、祥子はフルートを手にステージに上がってきてしまった。

少し美由紀と俺のバッハを聴いていたが、途中で音を合わせてきた。


「おいおい・・・」

と思ったけれど、ピアノとヴァイオリンにフルートが入ったバッハ=ジャズバージョンもなかなかシックである。

美由紀も祥子にクールサイン、祥子は美由紀にウィンクで応えている。

結局、他のバッハの曲も演奏し、途中から増えてきた客からたくさんの拍手やアンコールまでもらった。

意外だったけれど、祥子はジャズも曲を重ねるごとに、上手になった。



「ふう・・・どうなることやらと思った」

ステージから客席に戻り、バーボンを飲んでいると、美由紀も祥子も一緒に座った。

「それは、史君が打ち上げをすっぽかすからでしょ」美由紀

「ほんと、心配した」祥子

「だって、あんな打ち上げ興味ないし」と言うと

「そうだよね、ああいうニギニギしいの嫌いだった」美由紀

「私も嫌いだったし、史さん、ここにいるっと思ったから直行した」祥子

「ねえ、祥子ちゃん、またやろうよ」美由紀

「うん、史さんは聞き役でいいかなあ、二人でやりたい」祥子

どうやら美由紀と祥子は意気投合してしまったらしい。


それでも、コンサートの後の疲れが出てきた。

帰ろうと決めた。


「じゃあ、また・・・」

祥子と店を出ようとすると、祥子が美由紀に呼び止められた。

少し話している。



店を出てから、祥子が話しかけてきた。

「美由紀さんに言われちゃった」


「え?何?」


「史さんから目を離すなって」祥子


「どういう意味?」


「目を離したら、奪い取るって・・・」祥子


「何を奪うの?」


「このバカ男!」

祥子は思いっきり俺の足を蹴り上げてきた。

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