第119話やまふかみ
「山深み 春とも知らぬ 松の戸に 絶え絶えかかる 雪の玉水」
図書館で、新古今和歌集注釈集を読んでいた。
その中で、すぐに惹きつけられた式子内親王様の春の歌。
解説としては
「松の戸のある山居の周辺は、しんとして、早春とは言えないような空気が張りつめている」
「その戸にはポツリポツリと冷たく清らかな雪解けの滴が落ちかかっている」
「深い山の中で、雪解け水に春の訪れを感じる鮮烈な歌」だった。
確かにそうだと思った。
でも、表面的かもしれないと思いだした。
「山深み」は「病が深い」、「松の戸」は「末期の扉」、
「春とも知らず」は「治る《はる》ことは思わない」、
「雪の玉水」は「逝きの魂を見ず」と解釈すると
病が深く 治るとは思えない。
そんな末期の扉を 逝く寸前の魂が 何度もたたいている。
そんな風に読んでしまって唸っていた。
これじゃ、可哀そうすぎるって思った。
文学部の先輩女子に、恐る恐る聞いてみた。
「間違いですかね、この解釈・・・」
先輩女子が即答
「うん、マチガイ!」
「そんな解釈して、内親王様が喜ぶと思ったの?」
「君は女心を全く理解していない」
「・・・はぁ・・・」
理解していないけれど、少し安心した。
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