第310話怖ろしい受付嬢(3)

受付嬢の連絡を受けたのか、すぐに警備員が駆けつけてきた。

そうなってしまえば、警察沙汰になっても、困る。

講師とはいえ、有名私立大学に属する身分だ。

大学の名誉にも関わる事態にもなりかねない。

「わかりました、専務理事様には名刺だけをお渡し願います」と自分の名刺を受付嬢の前に置いた。

少し腹ただしいので、専務理事の名刺も置いた。

自分としては

「こんな無礼な会社とは、一切付き合わない」

と決めた。

専務理事と連絡が取れてからのほうが、大人の対応とは思ったけれど、服装程度で、ここまで不審者扱いされては仕方がない。

専務理事と連絡が取れないなどは、自分の責任ではないと考えた。

諦めて、玄関に歩き出した。


そして玄関の自動ドアの前に近づいていくと

後方から、走ってくる二つの足音。

一つは男の革靴、もう一つは細いハイヒールのカンカンとした音。

声も聞こえてきた。


「申し訳ありません!」

「当方のミスです!」

「出迎えに来ていて、専務室から出ておりました!」

まずは、聞き覚えのある専務理事の声。


続いて

「私の名簿確認ミスです!申し訳ありません」

受付嬢の声が聞こえてきた。

振り返ると

専務理事は息を弾ませながら、膝に頭をつけるほどのお辞儀。


受付嬢は頭を同じように深く下げた後、

「PC操作ミスでした」

「つい翌日の訪問者名簿をクリックしてしまいました」

さっきまでの、怖ろしい表情は、真っ青に変わり、ガタガタと震えている。

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