第226話怒鳴り散らす女房ロッサーナ(2)

毎日女房のロッサーナに怒鳴り散らされ、夫のマルコは朝から晩、いや深夜まで必死に働くことになった。

しかし、真面目一方、優しさだけが取り柄のマルコとて、さすがに体力の限界もある。

その上、マルコが作った食事は女房のロッサーナが「稼ぎが悪い亭主なんて残飯でももったいない」と言い切り、ほとんど自分で食べてしまう。


そんなことで、マルコは深夜の仕事、それも道路工事という力仕事から、家に戻る途中、疲れと空腹から足がふらつきだした。

それでも、真面目なマルコである。

「どうしても、ロッサーナの食べ残しを洗わないとといけない」

「ああ、洗濯も掃除も・・・こんなことでは、ロッサーナが困る」

そう思うのだけど、どうにも足が前に進むのが遅い。

それでも、家の前に来た。

「はあ、何とか」

そこで、少し安心したのがマルコの失敗だったのかもしれない。

家の玄関の前で倒れ込んでしまったのである。

もちろん、ほぼ意識はない。

そして、そのまま朝を迎えることになった。


そんなマルコを朝の出勤前の隣の主人ジュリオが発見した。

ジュリオは、本当に驚いた。

ジュリオとしてもマルコは隣人、そのまま見過ごすわけにはいかない。

「どうしたんだい?マルコ、何かあったのかい?」

ジュリオが抱きかかえて見る限り、マルコの顔色はかなり悪い。

以前見た時よりも、相当痩せこけている。


ジュリオとマルコのそんな様子を見たらしい。

ジュリオの妻ルチアも出てきた。

「うわ・・・これは・・・ひどい・・」

「ここまで痩せたの?病気?何があったの?」

ルチアは、マルコを見るなり涙を流している。


「う・・・」

意識をほとんど失っていたマルコは、それでも口を開いた。

「ああ、申し訳ありません。ジュリオさんとルチアさん」

「今から、ロッサーナの食事の後片付けと朝食と家の掃除と洗濯を手早くしないと」

「板金の仕事にも行かないと、金をもらえない」

ブツブツと話をするのだけど、声に全く力がない。


「ロッサーナさんは?」

ジュリオは、おそらくロッサーナが気がつけば出てくると思った。

ほとんど身体に力がないマルコを、ジュリオが担ぎ上げた。

そして、ルチアがマルコの家のベルを鳴らした。


・・・しかし、何の物音もしない。




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