第255話階下の圭子さん(完)
圭子さんからの「協力お願い」は、本当に奇妙なものだった。
圭子
「あのね、モデルをしてほしいの」
「・・・モデルって?」
圭子さんの部屋の中を少し見回すと、確かに画材道具がある。
圭子
「あのね、私、美大生なの」
「それで、次の課題が、男性の彫像なの」
「だから、そのモデルを」
「僕が?」
圭子
「他に誰が?」
圭子さんは、わりと強引である。
その目線も強い。
逃げられなかった。(恩義もあったし)
「・・・わかりました」
「でも、着替えたいのですが」
さすがに上半身ハダカでは、俺も恥ずかしい。
しかし、圭子さんは何も聞いていない。
部屋の隅から粘土のようなものを取り出し、
圭子
「そのままでいい、取りあえず、上半身の塑像を造るかな」
「そこの椅子に座って、普通でいい」
結局、塑像を造り始めてしまった。
しばらくして、
圭子
「モデル料は払えないけれど」
「・・・あ・・・いや・・・そんなものは」
圭子
「とりあえず、モデルの日だけは、ご飯一緒しよう」
「スーパーへの買い物もしなくていいよ」
「後で、何か作る」
そんなことを言って、ケラケラと笑っている。
まあ、俺にとっては、超ラッキーというか恥ずかしいというか。
でも、これが圭子さんとの「お付き合い」の始まりだった。
それで今?
野暮なことは・・・
尻に引かれている?
さて・・・
(完)
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