第161話聞こえてきた笛の音(2)(今昔物語)

妻は、結局、他の男からの求婚を全て、断りました。


そして、死んだ夫だけを恋い慕って泣き暮らすうちに、とうとう三年が過ぎました。


妻が、いつもより涙を流し、うち伏せていた真夜中に、笛の音がどこからともなく聞こえてきました。


「あの人の笛の音に、本当によく似ている」

妻は、いっそう悲しくなり、涙を流していると、笛の音はしだいに近づいてきます。


妻が本当にドキドキして、蔀戸の近くに座ると


「ここをお開けなさってください」

聞こえてきた声は、まさしく亡き夫の声だったのです。

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