第137話初めてのアパート暮らし(2)

夕方、再び緊張して、隣の彼女の部屋のドアをノックした。


「はぁーい!開いているよ!」

またしても、明るい返事。

それにしても、どうして初対面の人に、こんなに親切なんだろう。

それにドアが開いているなんて、無防備じゃないかと思う。

そんなことを思いながら、部屋に入る。


「すみません、なんと申しましょうか・・・」

自分でも何を言っているのかわからないほど、カチンコチンだ。


「あはは、固くならない」

「ポトフにしたよ、お口に合うかなあ」

確かにポトフの匂いが部屋中に充満している。

それと、美味しそうなパンの匂いもしてくる。

「うん、気づいた?パンも焼いたよ、ホームベーカリーだけど」

相変わらずケラケラニコニコ笑っている。


「・・・親切で・・・これじゃあ、幸せ過ぎだ」

そう思うけれど、主導権は、100%彼女にある。

それにポトフもパンも超美味だ。

その上、「内緒」の赤ワインも注がれた。


「あ、これから名前で呼んで?私は祥子、君より二つ上だよ」


「あ、僕、晃です、よろしくお願いします」


「へえ・・・晃君かあ・・・」

祥子は、またニコニコしている。


「それでね、晃君」

祥子の目がいたずらっぽくなった。


「・・・なんでしょうか・・・祥子さん」

またドギマギしてきた。


「晃君ってね、顔見て笑っちゃったんだけどさ」祥子


「う・・・そうでした」晃


「私の従妹に顔がそっくりなの!今15歳だけどね!」

祥子は笑い転げている。


「はあ?従妹?女の子の顔?」晃


頭がガンガンしてきてしまった。

赤ワインのせいではない。

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