第138話初めてのアパート暮らし(3)

引っ越し初日の出会いから、晃と祥子は、本当に仲良くなった。

お互いの都合がつく限り、一緒に出掛けた。

そうは言っても最初は食料とか雑貨の買い出し。

次第に映画とかコンサート、食事に変化した。

ただ、それが「男女関係」に発展するような兆しはない。


祥子にとって晃は「従弟感覚」、晃にとって祥子は「従姉感覚」なのである。

そんな状態が、三か月程続いた。



「晃君、暑いからプールに行かない?」

祥子は晃をプールに行こうと誘った。

晃としても、特に問題はないからすぐにOK。

「それでね、私の女友達も行くけどいいかなあ」

祥子から、そんなことを言われたけれど、それも全く問題はない。

そもそも、断る理由がない。

その女友達とは、プールで待ち合わせと言うので、二人でプールまで、出かけた。


「はーい、彩でーす!これが晃君?」

待ち合わせ場所にいた、祥子の女友達は、祥子以上に超明るい。

「うわーーー!なかなかだなあ!」

「ねえ、祥子!どこまで進んだの?」

よくわからないことを言ってくるけれど、祥子は笑うしかない。

何しろ、進むとか何とかの状況ではない。



プールに入っても、彩はかなり積極的だ。

何しろ、ドンドン話しかけて来るし、いつも近くで泳ぐ。

プールから出て、三人でお茶した時も、祥子はそっちのけ、いろいろネホリハホリ聞いてくる。

帰り際にも

「じゃあね、また会おうね!」

思いっきり手を振り、帰っていった。



「はぁ・・・疲れた」

晃の実感である。

それも顔に出てしまったらしい。



「プッ!」

そんな顔を見られた。

祥子は笑い出した。



「晃君にせっかく彼女紹介したのに・・・それじゃあ無理だね」

祥子の口からとんでもない発言。


「え・・・何ですか、彼女って・・・」

晃は、思わず聞き返した。



「晃君みたいな人は、ああいう積極派がいいかなあと思ったけれどね」祥子


「そのみたいな人って・・・」晃


「わからなかったらいいよ、少し安心したし」祥子


「・・・ますますわからないし」晃


「いいから帰る!ほら、手くらいつなぎなさい!」祥子


「あ・・・はい・・・」晃


晃は、ますます暑くなってしまった。

ただ、祥子もそれは同じだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る