第136話初めてのアパート暮らし(1)

大学も何とか合格して、上京。

初めてのアパート暮らしをすることになった。

心配なのは料理などしたことがないと言われたけれど、

それでも、アパートの周りには定食屋もあるし、コンビニもある。

食べることさえできれば、何とか生きてはいける。

その意味では、何も心配をしていなかった。


引っ越しをした日に、一応ご挨拶ぐらいはしなければならない。

隣には、顔を出そうと思った。

そう思って、すごく緊張して、隣の部屋をノック。


「はぁい、少し待っててね」

明るい感じの声が聞こえてきた。

ドアが開いたので

「あの・・・今日から引っ越してきました」

カチコチ気味にご挨拶。


「プッ!」

いきなり笑われてしまった。

ますます緊張した。

小柄で、けっこう可愛いし。


「はい、よろしくね!」

手まで差し出されてしまった。

握手なのだろうか、オズオズと手を出すと、ギュッと握られた。


「何か困ったことがあったら言ってね!」

「私からも、声をかけるかもしれない」

「その時は、お願いね!」

割とポンポンと言ってくるので。頷く以外はない。



「お部屋片付いたら、もう一度来てね」

「何か作っておくよ」

そこまで、親切にしてくれた。

その時点で「え?」と思ったけれど、断るのも変だと思った。


そして、その時の気持ちが、全ての出発点だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る