第221話上品な春香さん(3)

「あのね、男女の仲というのはね」

春香さんの顔が、少し赤くなったような気がする。


「はい」

何だか、俺も赤くなってしまった。


「理屈じゃないことが多いの」

「私は図書館で晃くんの隣に、急に座りたくなって」

「それもずっと、座っていたくて」

「英語のチェックも、余計以上にしたくなって」

「お夕飯も、一緒にしたくなった」

春香さんは、ゆっくりだけど、上品で丁寧な話しぶり。

しかし、それ以上に、その内容が「赤面もの」だ。


「理屈じゃないって言われても」

春香さんは俺から見れば、「高嶺の花」のような上品な人。

憧れであっても、自分から声などかけてはいけないくらいに思っていた。


「まあ、強いて言えばね・・・」

春香さんは、クスッと笑う。

俺は、その次を聞くしかない。


「晃君ね、ご両親かな、しつけがすごくしっかりしているなあって」

「学食での食事の仕方、お箸の使い方も含めて、すごくきれいなの」

「英語は、イマイチだけど、古典文学は好きでしょ?」

「私も大好きなの、今度一緒に、本を探しに行こうよ」


「・・・ありがたいです」

そう言えば、母は茶道の家元、食事の作法はメチャ厳しかった。

源氏、枕、古今、新古今とか古典を好きなのも、母に仕込まれたから。

それにしても、俺が古典文学を好きなのを何故知っているのだろうか。


ますますドキドキしてしまう。

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