第222話上品な春香さん(4)

食事の後は、春香さんを、送ってから帰った。

春香さんの「ご自宅」は、杉並の「お屋敷」が多い区域。

そのお屋敷だらけの中に会って、全く引けを取っていない。


「じゃあ、またね」

春香さんは、やさしく微笑んでいる。


「あ・・・はい・・・いろいろとご馳走様でした」

お礼を言うのにも、我ながら顔が真っ赤で恥ずかしい。



「うーーー古典文学好きって、どうしてわかるのかなあ」

「まあ、図書館で借りる本は、そういう本が多いけれど」

「それを見られていたのかなあ」

首を傾げながら、家に帰った。



ベッドで、いろいろ思い出していると、スマホが鳴った。

「わ!春香さんかな!」

飛び起きてスマホを取ると

「げ・・・母?」

「しかたないなあ」

それで電話を受けると


「ねえ、春香ちゃんとデートしたの?」

母ならではの「イキナリ」の質問。


「なんで知ってる?」

まるでわけがわからない。


「あはは、そりゃ、知っているわよ」

「大学の同級生の娘さんだもの」

母はケラケラ笑っている。


「ということは、同級生から電話がいったの?それとも春香さん?」

どうにも聞きたくなった。


「ああ、両方だよ、春香ちゃんは面白かったって!」

・・・面白いって何だよと思ったけれど、母の言葉が続いた。


「うん、晃はアホで無粋だから、よろしくって言っておいた」

「そしたらね、春香ちゃんのお母さんがね、喜んでね」

「何しろ晃のことを見たくて仕方がないみたい」

「一度、こっちからお礼の品を送るからさ、それ持って行きなさい」

「いい?わかった?」

・・・・・長々と「お上品になさいね、作法に従って」を言われたけれど、「お風呂する」で、ようやく電話を切った。

ほぼ、母だけの「おしゃべり30分、全会話中の90%」だった。



上品な春香さんだ、緊張するなあと思うけれど、ちょっと幸せだ。



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