第302話美幸の恋(完?)

美幸は、とにかく悠に元気をだしてもらいたかった。

「元彼女」との悲惨な結末については、簡単に悠が忘れ去るものではないと思う。

しかし、悠は、それにとらわれてはいけないと思う。

なんとか「大人の女」として、悠をなんとかしたいと思った。

料理は悠が来る前にしっかり煮込んであったビーフストロガヌフ、サラダ、パン。

悠も、美味しそうに食べる。

「美味しいです、ご飯にも合いますね」

美幸

「いつかはお弁当にしようかな、できたら試食してね」

悠は、そこで少し笑う。

美幸は、ホッとする。


夕食後、少し世間話をした。

悠も落ち込んでいた時の顔よりは、普通に戻っている。

美幸は、話題も変えた。

美幸

「ねえ、悠君は、アイドルとか見るの?」

少しからかい気分、この世代の男の子が、アイドルの好みぐらいはあると思うし、「元彼女」とは別のレベルの話を持ちかける。

悠は

「えっと・・・ここで?うーん・・・」

少し考え込むし、なかなか答えが出ない。

美幸は、少し面倒になった、もしかして自分を気づかっているのかなと思う。

「これは聞き出すぞ」思い切って悠の隣に座ってしまう。

すると悠も、驚いた顔をする。

美幸は

「あのさ、おばさんと思っていない?それはアイドルほど若くはないけどさ」

美幸自身が変な話をしたと思う。

アイドルと自分を比べること自体が変なのだけど、話のレベルが違うし・・・


悠は、美幸が隣に座ったことで顔を真っ赤にしている。

「えっと・・・今は・・・美幸さんの笑顔がいちばん好きです」

もう、答えるのも必死な顔。

美幸はうれしくなった。

「へえ・・・こんな私がいいの?」

悠はますます真っ赤な顔。

「その笑顔が好きだから・・・ここに」


美幸は、メチャクチャときめいていしまった。

「そんなことを言うと・・・」


ほぼ衝動だった、実際何も考えていない。

理屈じゃないと思った。

はしたないとか、年上とか、恥ずかしいの気持ちもなかった。

何かに導かれるように、思いっきり悠を抱きしめてしまった。


そしたら、悠もグッと抱きしめてきた。


後は・・・男と女の関係になった。


夜通しだった。


朝になった。


美幸

「悠君、はじめてだった?」

悠は

「はい・・・」

うつむいて恥ずかしそうに答える。


美幸は

「うん、悠君、すっごい元気で美味しかった」

自分でも言っていることが恥ずかしいけれど、本音。


そして、また・・・


一緒にお風呂に入った。


少し日が高くなり、美幸は弁当を作らなければならない。

悠も事情はわかっているので、「通学」の準備に自分のアパートに戻ると言う。

別れ際に「ありがとうございます」


美幸はまた顔が赤くなった。

「また、来てね」

つい言ってしまった。


悠は

「はい・・・美幸さん」

そして美幸の耳元に口を寄せて

「大好きです、美幸さん」


見送った美幸は、少し腰がふらついている。

「はぁ・・・すごかった、身体が敏感のままだ・・・」

「でも、今度は・・・私がヒィヒィ言わせたくなった」


美幸の恋は、こんな形で始まった。



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