第301話美幸の恋(7)

美幸が悠の途切れ途切れの言葉の中から、理解した話は次のようになる。


悠は大学受験の前、故郷で付き合っていた彼女がいた。

しかし、故郷の知人から、突然その彼女がバイクの事故で死亡したとの連絡があった。

悠も驚いて、故郷に帰り、彼女の葬式に参列した。

ここまでは、まあ、ありえない話ではない。

しかし、悠が本当に苦しんだのは、死んでしまった彼女が、バイク集団の「男」と悠を「二股」をかけていたことだった。

そして悠の「元彼女」とバイク集団の「男」は、悠が気づかない状態で、悠の上京前から「親密な状態」であったらしい。

そして、それは悠が、彼女の葬式に参列して、初めて知ったということだった。

また、悠の元彼女の死因は、その「男」との二人きりのツーリングでの「事故死」だった。


美幸は、下を向く悠の背中をなで続けた。

「何も言えないけど・・・ショックだったね」

ずっと純情なだけの悠が、裏切られていたとの話などはできない。

でも、それが事実、それがわかっているから、悠も苦しんでいるのだと思う。


「あまり、自分を責めちゃだめだよ、悠君」

美幸は、悠が可哀想としか思えない。

あんな、可愛くて、ウブな笑顔を見せていた悠が、こんなに落ち込んでいる。


悠は

「なんか・・・無力感を感じてしまって」

「自分がそんな程度の男かなあって」



美幸は、とにかく悠を一人きりにしてはいけないと思った。

といって自分に何が出来るのかわからない。

でも、このまま帰すことは、可哀想過ぎると思った。


そして

「悠君、お食事していきなさい」

「力がつくものを作ってあげる」

「それから、お食事が終わったら、悠君の話をもっと聞かせて」

悠に食事を食べさせると言い出した。


悠は

「え・・・いいんですか、変なメソメソした話をしてしまって恥ずかしいのに」

少し引いているけれど


美幸は

「いい?私は悠君の元気な顔が好きなの」

「私だって、悠君に元気をもらったんだから」

引く気はない。


・・・そして、この後が、また・・・になる。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る