第41話クリスマス・イブ

結局一人でいるのもつまらない。

しばらく街をぶらついてから、マスターの顔を見に行くことにした。


「おや、珍しい、こんな夜にお一人ですか?」

マスターはぶすっとしている。

余計なことを言うもんだ。


「ああ、一人が気楽さ」

そんなことを言いながら店の中を見ると、カップルだらけ。


「そうは言っても、今夜は場違いですね」

ますます、マスターの言葉が胸に刺さる。

ただ、この雰囲気で「お一人様」は確かに場違いと思う。


「マティーニでいい」

こういう日は強めの酒がいい。


しかしマスターは首を横に振る。

「ダメです、出しません」

断られてしまった。


代わりに一枚のファックスが置かれた。


「家に戻ってください」

「七面鳥焼いています」

「マスターからワインが届きました 美紀」

これでは、戻るしかない。

マスターには手を合わせ、バーを出た。



マスターはため息をついた。

「どうして、二人とも、ああ不器用なんだろう」

「さっさと、くっついちまえばいいのに」

「下らねえ意地ばかり張りやがって」

「高いワインだしなあ」

「七面鳥の焼き方だって最初っからだぜ」


マスターは窓の外を見た。

「もう面倒だから、仲人でもするかな」

「その前に滑って転ぶんじゃねえぞ」

確かに、かなり雪が降りだしている。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る