第289話春麗物語(3)

和国からの客人雅が、主人の部屋に入った後も、春麗の震えと顔の赤さは変わりません。

「・・・どうしちゃったんだろう・・・」

「お顔は可愛らしくて美しくて、雰囲気がたまらなく好きなんだけれど・・・」

「少しだけ指が触れた、それも偶然」

「でも・・・どうしてこんなに足が震えるの?」


春麗と同じこのお屋敷に仕える女の子たちは、雅と春麗の様子が気になるものの、どうにもなりません。

「確かに匂い立つような美形で」

「私もできれば春麗のように飛び出して手紙を受け取ろうかと思ったけれど、何もできなかった」

「少し出遅れて悔しいけれど、春麗の様子がどうにも・・・」

結局、そんな状態で、雅が主人の部屋から出てくるのを待つ以外、何もできません。



さて、そんな春麗と女の子たちが待ち受ける中、ようやくご主人の部屋の扉が開きました。

そして、ご主人と雅が、一緒に春麗たちの前に歩いてきます。


ご主人は、そのお顔に満面の笑みをたたえ

「私の願望がかないました」

「当分の間、およそ一年程度となるけれど」

そこまで言って、お屋敷に仕える女の子たちの顔を見回します。

女の子たちの顔には緊張が走ります。


ご主人は言葉を続けます。

「この雅君は、わが家の御客人となります」

「この家にある漢籍などを研究なさるという名目」

「それで・・・」

ご主人は雅に軽く微笑み、そして再び女の子たちの顔を見ます。

「この雅君のお世話係を、この中から」


その言葉で、女の子たち全員が、その胸をおさえます。

ドキドキしてしまい、全員の顔が赤くなります。


ご主人

「雅君に選んでもらいましょう」

クスッと笑うと


「あの・・・先ほど、大使の御手紙を受け取っていただいたお方に」

その美しいお顔を赤くして、春麗を見つめます。


春麗

「え・・・私・・・」

あまりにもドキドキしてしまったのか、胸をおさえ苦しい様子。

もう、フラフラになっています。


雅は、そんな春麗にさっと近寄ります。

そして、いきなり抱きかかえてしまいました。

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