第210話初夏の立ちくらみ

「まあ、なんて強い日差しなんだ」

図書館から外に出た瞬間、強い立ちくらみ。

「ちょっと・・・無理」

とても目なんか開けていられない。

それでも、薄目にして、校庭を歩くけれど、立ちくらみ後の気分悪さは、なかなか消えない。

おまけに、吐き気と目まいもする。


「うーーーとにかく日陰、木陰」

涼しい所、日の当たらない所を探す。

しかし、なかなか、そんな所がない。


・・・で・・・そこまでは意識があった。

そこからの記憶が無いけれど、目を開けると、天井には蛍光灯、壁は白っぽい。

背中の下は・・・ベッド?

「え?何?ここ・・・どこ?」

キョロキョロしていたら


「このタワケモノ」

美紀の声が聞こえてきた。

そう言えば、図書館で、後ろの方の席に座っていたけれど、最近ケンカしたばかりだから、声もかけなかった。


「飲み過ぎ、夜更かし、栄養不足、試験前の無理な勉強」

「私が追っかけて、助け起こさなかったら、どうなったと思うの?」

「いい?私は命の恩人なの!」

・・・・・・

目を閉じているにも関わらず、文句は止むことがない。


「狸寝入りはしないの!」

そこまでは、我慢できた。

美紀は、変なことを言い始めた。


「危ないから電車乗っちゃダメ」美紀


「どうやって帰る?」


「このアホ!タクシーだよ、もう頼んじゃった」美紀


少し間があった。

「私も乗っていく」美紀


「おい・・・方向逆だろ?」

と言おうとした瞬間、唇をぎゅっと、つまんでくる。

痛くて、声も出やしない。

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