第28話華奈
「もう・・・どうして、毎晩遅いのですか・・・」
華奈は、ゆっくりと私の身体を揉みほぐしている。
ゆるやかな衣装から白檀の香が漂ってくる。
「そんなことを言われても・・・」
「写経所というのは、仕事が山のようにあるし」
「座り仕事で・・・」
つい、出てくるのは愚痴ばかり
時折、首をあげると朱塗りの柱に白い壁
最近できたばかりの五重塔も見える。
「本当に帝のご写経なんですか・・・」
どうやら華奈は疑っている
「そうさ、聖武様は、ことのほか好きなんだ」
「指に残る墨の跡とか、筆だこでわかるだろう」
「そうですよね 腰の張りも右腕の張りも半端じゃない」
華奈の指の力は強くなった。
「でも・・・私には、そのほうがいい」
華奈はよくわからないこと言う。
「え?」
「だって・・・こんな親のいない、私を拾ってくれて・・・」
「せっかく・・・なのに」
「え?」
「え・・・じゃ ありません」
華奈は、思いっきり腰の部分を押した。
コキンと骨が鳴った。
「あ・・・痛い・・・でも、楽になった」
本音だ。
「でしょ?」
「ほかの女にはできませんよ、こんなこと」
白檀の香が首の後ろ
湿り気を帯びた柔らかな何かが 耳に
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