第27話いつもの井の頭線

いつもの井の頭線

急行に乗れば明大前まで8分

予想通りだけど、今日も座れない。

連日の飲み会で、胃を壊した。

胃薬も切らして、鎮痛剤もない。

次の永福町で、たくさん乗り込んでくるはず。

考えただけで、ますます胃が痛い。

そしてその次の明大前で神保町行きに乗り換える、人ごみの中の胃痛はますます痛みを増幅させる。


眼を閉じて胃を抑えていると

「通してください、すみません」

聞きなれた声がする。

確か最近、吉祥寺に越したって言っていた。

同じ部署だれど、本当に口やかましい。


「飲みすぎるからです」

隣でその声がした。

「あれほど、言ったのに」

「勝手に連れられて・・・」

「いい罰です」

「ほんとに、心配したんですから」

「今日は、大事な仕事ってわかっていますよね」


「ごめん」


「世話焼けます」

「お薬です、ぬるま湯にしました」


「ありがと・・・」


「そんなんじゃ だめです」

「飲むときは、私の許可か・・・」


「え?」


「私と同伴してください」

声が少し震えていた。



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